「実はブール代数だから1です」とかは言いませんよ(笑)。
では何故1+1=2になるかは知っていますか??
1+1=2なのは当たり前じゃないんですか??
そういえば何故そうなるのか考えたことなかったかも…。
当たり前なことを証明するって結構難しいんですよ。
1+1=2なんて数学の初歩の初歩だし簡単そうなんですけど。
二通りあって
(1)簡単な説明ver
(2)ちょっと難しい証明ver
となっています。
前提
ここでは1+1=2になる理由をざっくりと説明していきます。
そのため細部を省くこともあると思いますのでそこはご了承ください。
より正確な証明が知りたい方は整数論を勉強していただくとよいと思います。
スポンサーリンク
(1)簡単な説明ver
では 1+1=2 ということを証明していきましょう。
まずは説明のために必要な言葉の説明と使う公理について見ていきます。
証明するための準備
言葉の説明
- 公理 … もうそれ以上は証明しなくてもいいよっていう仮定のこと。
- 系 … 一定の相互関係を持っている集まり(集合)のこと。
- 公理系 … 数学の理論体系を構築するにあたり, その理論の基礎となる公理の集まり。
使う公理系
- 演算の公理
(1) 対象律: $a=b\quad \Rightarrow \quad b=a$
(2) 推移律: $a=b\quad , \quad b=c\quad \Rightarrow \quad a=c$
(3) 交換法則:$a+b\quad =\quad b+a$
(4) 分配法則: $a(b+c)\quad =\quad ab\quad +\quad bc$
(5)結合法則:$(a+b)\quad +\quad c\quad =\quad a\quad +\quad (b+c)$
Let’s 証明!!
まず, 我々が使うことのできる道具を確認しましょう。
手持ちのアイテムは演算の公理だけです。
はい, 確認はすぐ終わりましたね。 なんせ一つしかありませんし…(笑)。
では演算の公理だけでいざ証明!!とは残念ながらいきません。
先程の演算の公理を見てわかると思うのですが, 数について(厳密に言うなら自然数)の定義がないのです。
ですので我々自身で”1″とか”2″を定義していく必要があります。
でははじめに”1″が何者なのか定義していきましょう。
ん〜〜。”1″とは何者なんでしょうか。
1番目, 1個, もしくは”ある”ということを表すときに使うとは思いませんか??
ここでは”1″を「自然数の最初の数」としましょう。無難ですね。
ではこの調子で”2″を定めていきましょう。
ですが私の力では深く考えても, 深く考えても今のアイテムだけではどうしようもありません。
ですので深く考えるのをやめて
「2は1+1のこと, つまり2は1の次の自然数である」とします。
よって2の定義より,
$$2\quad =\quad 1 + 1$$
なので
$$1+1\quad =\quad 2$$
となります。
なんか色々と難しく言っていましたがもう説明終わりましたね。
「な〜んだ。そんなことかよ。」と思った方, その通りです。
しょせんは 1+1 , 難しく考える必要などないのです。
ですが, 「ん??なんかおかしいな??」と思った方, 素晴らしいです。
そうですよね。偉そうに証明するとか言って自分で定義したものを使って
1+1=2 を説明しました。
一つ言っておくと先程の説明は正しいです。
では, 「1+1」の答えは「2」だけなのでしょうか。
そうではありません。
私の説明(定義)では「1+1=2」となりますが, “0”になるパターンもあれば”1″になるパターンもあります。
ようするに定義次第なのです。
先程の会話で交わされていた「ブール代数」なんかはその一つなんです(伏線回収です)。
ブール代数は「1+1=1」とするよう定めている数学の理論なのです。
こうやって考えていると数学って面白いですね。
定義次第で解釈が変わり, 1+1ですら違う答えになるんですから。
スポンサーリンク
(2)ちょっと難しい証明ver
(1)と同様に1+1=2 ということを証明していきましょう。
まずは説明のために必要な言葉の説明と使う公理について見ていきましょう。
言葉の説明
- 集合 … あるものの集まりのこと(ex. 自然数, 大学のサークル)
- 要素 … 集合の中に属すもの(ex. 自然数なら1や2, 大学のサークルならメンバー)
使う公理系
- ペアノの公理系
(1)1は自然数Nの要素である。
(2)nがNの要素であれば, nの次の要素n’もNの要素である。
(3) (1),(2)の過程で得られるものだけがNの要素である。(外部要素はない)
(4)Nの要素nに対し, n’ ≠ 1。(派生先が1になることはない)
(5)Nの要素n , mが存在し n’ = m’ のときのみ n = m。
Let’s 証明!!
ではペアノの公理を用いた1+1=2である証明をしていきましょう。
まずは公理(1)から自然数Nの始まりである”1″をジェネレートします。
次に公理(2)のNの要素である条件を確認していきましょう。
nがNの要素であれば, nの次の要素n’もNの要素です。これをnでなくn’に対して適用すれば
(n’)’もNの要素であることが導けます。これを再帰的に行っていけば,Nの要素がどんどんでてきますね。
n , n’ , (n’)’ , ………………………
ここで(4)を適用してみましょう。先程のnが”1″になるとは思いませんか??
1, 1′ , (1′)’ , ………………………
ではここで(4)と(5)を適用してそれぞれの要素が異なることを証明しましょう。
Nの要素n , mが存在し n’ = m’ のときのみ n = mです。
n’ ≠ 1′ であり, (4)より 1 ≠ 1′ ですからNの要素1’は他の要素とは違うことがいえます。
これを1’以外にも適用すればNの全てが違う要素であることが証明できます。
これまでの説明でNの要素 1, 1′ , (1′)’ , … は自然数の系列と同じであることが説明されました。
「説明されました」といっても「は??」って感じですのでもう少し具体的に見ていきましょう。
ではまずNの要素nとその次のn’の関係を定めましょう。
私が今使えるのは 1 , n , n’ とします。{(1)’とかまだ何かは知らんわ!!!ってことです。}
では n’ = n+1 とし, 足し算の関係を定義します。
ではここに 1, 1′ , (1′)’ , … を代入しましょう。
すると 1′ = 1 + 1 , (1′)’ = 1′ + 1 = (1 + 1) + 1 , … とみちびかれます。
ん?? 何か惜しいですね。
では 1′ = 2 , (1′)’ = 3 , ,,,と自然数に対応させてみましょう。
するとどうでしょう!
2 = 1+1 , 3 = 2+1 = 1+1+1, … となりますね。
自然数を全て1の和で表すことができました。
よく見てください。しれっと2 = 1+1が導かれています。
さいごに
どうだったでしょうか。
「所詮は1+1, されど1+1」って感じではなかったでしょうか。
これでも説明を省いている部分があるんです… 。
冒頭でも言いましたがこの手の証明なんかは整数論で学ぶことができます。
公理から移項やら和の定義やら少しずつ少しずつネチネチと導かなきゃいけませんが…。
私は高2くらいのときにこの世界は無理だなって悟りました(笑)。
ですが「1+1はなんで2なの??」とか「移項ってそもそもなんでやっていいの??」とか
考えるのは面白くありませんか???
今まで当たり前だと思っていたものを正しく認識できると嬉しくなるもんです(私だけかもしれませんが)
今後もそんな「当たり前」なものを説明できたらなと思います。
スポンサーリンク
参考書籍
この本は素晴らしいです. 私は2年生のときに友人に教えてもらったのですが読みはじめると止まりませんでした. 数とは何か, 数と数直線の関係から始まり公理とは何か, ふとした疑問を解決してくれます. 1+1はなんで2なのか, 何故方程式で移項をしてもいいのか, 根本的な内容の理解は数学に対する理解を深めてくれます. 高専の数学の補足に使え, 数学の学習の参考書としては抜群です.