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Apex Legendsによる文化的背景の違うユーザの交流に関する分析(#2)

shimasan0x00

※2021年10月30日のnote記事を移行したものです.

こんにちは,Shimasan(@shimasan0x00)です.

さて,前回はYouTube上でAPEXの配信をして多くのユーザを集めている配信者などに絞り,それらのユーザの実際に行ったコラボのデータからネットワークを作成し,その特性を示しました.

渋谷ハルや白雪レイドなどの大きなコミュニティについて言及し,特にその二人に関してはユーザ同士を繋ぐ役目としてネットワーク上で高いスコアを誇っており,単なるチャンネル登録者数以上の価値をその周辺配信者へと還元している話をしました.

今回は社会学の観点に基づいたアプローチをもってTwitterのデータを使用したネットワークを作成し,その特性を明らかにしていきます.

前回との大きな違いは前回のネットワークは「APEXの活動」を軸に作成したものですが,今回のネットワークはその「ユーザの活動影響」が軸となるネットワークになるということです.

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分析の流れ

  • 配信者の配信サイトからコラボ相手とのネットワークを作成(前回)
  • 配信者の持つTwitterのフォロワーによる関連ネットワークを作成(今回はココ)
  • 実ネットワークと関連ネットワークの特性の違いから異なる文化圏のユーザとの交流を示す

社会学の観点に基づいたネットワークとは

さて,冒頭でも書きましたが今回は社会学の観点に基づいたアプローチでユーザの特性を明らかにしていきます.

社会学ではユーザからなるネットワークがあるときにそのユーザがどのような特性を持っているかはそのユーザ自身の情報は必要ではなく,接続されているユーザから決定されると考えるそうです.

その考え方に基づいてTwitter上のユーザの特性は実際にどの繋がり(フォロー,フォロワー)で得ることができるのかを公開しているものではVTuberのデータを使用した分析記事で公開しています.

分析結果の中で特に今回大事になるのは,フォロワー集合がそのユーザを決定させる属性や推すユーザ層が反映されている点です.

そこで,そのフォロワー集合の重複度合いを見てあげることで実際のユーザ間の繋がり,コラボなどの関係や似ているユーザ特性を持つユーザ同士が繋がるネットワークを作成できることが期待できます.

以前,実際にblogやYouTube上でVTuberを対象にしたネットワークを作成し,その特性や特徴について言及しています.

今回はこれを前回得られたユーザ群に適用します.

用語の統一

今後「ネットワーク」という場合に前回の作成したネットワークと今回作成するネットワークの二種類が存在することになるのでそれぞれ別の名前をつけることにします.

  • 前回のネットワーク = 実ネットワーク
  • 今回の作成するネットワーク = 関係ネットワーク

使用するデータ

前回の分析の際に収集した74名のユーザを対象とし,それらのフォロワーデータをTwitter APIを用いて2021年10月27日から収集をしました.

大きな影響はありませんが,APIの制限により1分間に5000フォロワーのidデータしか収集することができないため,全ての対象ユーザのフォロワーデータを同一の時間で収集できていないことに留意してください.

毎度この手のデータ集めるときに言ってるんですが,インフルエンサーのフォロワー多すぎです.

グラフ作成

まずは収集したユーザのフォロワー集合の重複度合い(類似度)を計算していきます.

これはユーザ間を繋げるのに必要であり,収集したユーザに対して全て線(エッジ)を繋げてしまうと可視化しても見にくい(約2700本)ので得られた特定の値からカットしていきます.

今回はSimpson係数という集合の類似度を計算するものを使用します.

実際にSimpson係数を計算し,得られた分布を以下に示します.両対数でプロットしています.

得られたこの分布から急激に値が落ちている部分を今回のしきい値とします.

今回は0.56としました.これによって数千本のエッジが247本になります.

参考までにSimpson係数の大きな組み合わせ上位10件を示します.

留意点として,Simpson係数は大きな集合と小さすぎる集合とで計算するとその式によって1に近くなります.とりあえず今回は最低フォロワーサイズを規定していませんが通常は制約を設けるのが普通でしょう.

CRの組み合わせ(だるさか)であったり,にじさんじのVTuberユニットであるKuzuha,KanaeのクロノワなどAPEXのコミュニティシーンを見ている人であればちょっとは聞いたことのある組み合わせではないでしょうか.

前回の記事でも言及した渋谷ハル,白雪レイドの元個人VTuberも上位に入っており,実ネットワークで活躍していたユーザが今回の関係ネットワークでも活躍してくれているかもしれませんね.

可視化

今回も作成したネットワークに対してLouvain法によってコミュニティ抽出をおこなっており,コミュニティ数は5となりました.

ノードのサイズをYouTubeのチャンネル登録者数,Twitterのフォロワー数,多くのユーザ同士を繋ぐ役目を担うユーザに大きなスコアを与える媒介中心性で変更します.

また,ユーザ間を結ぶエッジ(線)は先程説明したSimpson係数によって大きさ,色の濃さが変化します.

まずはそれぞれの結果を示してから話を進めましょう.

全体像

YouTubeのチャンネル登録者数

Twitterのフォロワー数

媒介中心性

分析結果

得られているコミュニティは大雑把にいうと,CR歌い手渋谷ハルを除くVTuberでないAPEX競技シーン者含む配信者APEXをメインとするVTuber,にじさんじを主力とするAPEX以外の活動も多いVTuberコミュニティです.

お気づきの方もいられるかもしれませんが,フォロワーの重複度が基準に満たないために芸能人やクリエイターのユーザが関係ネットワークから排されています.

これはAPEXを介しての異なる文化的背景を持つ視聴者間の移動が起き始めたばかりであり,直感に合う結果です.つまり,まだまだ配信者はチャンスがあります

また,今回のネットワークはAPEXという縛りはなく,そのユーザがこれまで培ってきた活動によって得られるネットワークです.

そのため,とある組織所属であったり特定の活動出身であったりよくコラボする関係性などで有力なエッジが張られます.皆さんの納得する,直感に合う結果に近いのではないでしょうか.

さらに媒介中心性の高いユーザを見ていきましょう.

前回は渋谷ハル,白雪レイドが実ネットワークでは重要な役割を果たしていました.

今回の関係ネットワークを見ると,渋谷ハルやRas,Kuzuhaなどが媒介中心性が高いです.これは自身のフォロワー(ファン)をコラボ活動などによって周囲の配信者と共有していることになります.フォロワーサイズの差が大きいほどその影響は顕著です.

例えばSimpson係数上位の組み合わせに渋谷ハル,白雪レイドがいましたがフォロワーサイズは圧倒的に渋谷ハルが大きく,白雪レイドは渋谷ハルのファンユーザの多くを共有していることになります.もちろん,これは渋谷ハル側も白雪レイドのファンを多く共有しているといえます.

この関係ネットワークでは”APEX”が主にユーザ間の接着剤として機能していますがその前後のコラボ等の活動によって在り方が変わっています.

終わりに

今回は社会学の観点に基づいたアプローチをもってTwitterのデータを使用したネットワークを作成し,その特性を調査しました.

実ネットワークに現れていた芸能人など異なるコミュニティに所属するようなユーザと配信者たちはまだ交流がパブリックな場では始まったばかりなので関係ネットワークでは消える結果となりました.結果でも述べましたがこれはまだチャンスがあるということです.

また,前回のときと同様に媒介中心性からユーザ間を繋ぐ役目としてスコアの高いユーザについて示唆しました.

やはりAPEXのコミュニティは渋谷ハルによって接続されている場面が多く,リアルとバーチャルの存在を接続する橋渡し役として重要な役目を果たしているといえます.各種SNSの影響力がもう少しあってもおかしくありません.

媒介中心性の高いユーザによってAPEXの認知,周辺ユーザを知るキッカケになっていることからも各種SNSの数字の大きさだけでなく,このようなネットワーク分析的なアプローチから得られる指標も必要だと考えます

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ABOUT ME
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高専→大学編入→大学院→社

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